「奇跡のリンゴ」で知られた自然栽培農法の原料を使っている都市型ワイナリーに行ってきました! まいぷれ札幌市中央区編集部
2024/10/2
❶木村式自然栽培の原料で作られたワインやシードル
➋赤ワイン(ツヴァイゲルトレーベ2019年)
❸都市型ワイナリー「リベラ ワイン テラス」外観
❹内観:試飲所「ブルスケッテリア ミロ」
❺平澤社長(向かって右側)と、小山田シェフ
「奇跡のリンゴ」で知られる木村秋則氏のことをご存じの方は多いのではないでしょうか。その自然栽培農法で育てたブドウでワインを醸造しているワイナリー:LIBERA WINE TERACE(リベラ ワイン テラス(写真❸))が、この6月下旬に札幌市中央区(北2条西10丁目)にオープンしておりました。
札幌市中心部のワイナリーというだけでも珍しいのですが、こちらでは障がい者の方も製造に関わっておられるなど、多くの有意義な取り組みがなされています。
まいぷれ札幌市中央区編集部では、その経営者:平澤真理奈氏(写真❺)にインタビューすることができましたので、お届けいたします。(取材日:2024年9月26日)
■自然栽培との出会い
編集部: こちらでは、ワインやシードルを製造する原料として、自然栽培されたブドウやリンゴを使われているとのことです。そもそもそうした取組みをされている経緯からお伺いしたいのですが。
平澤氏: 自然栽培は、土を活かし、根を活かし、作物の特性を活かして、肥料・農薬・除草剤に頼らない農法です。私どもでは2021年から自然栽培の畑を引き継ぎ、自分たちで育てた原料でワインやシードルを製造しております。
編集部: えっ、他から仕入れているのではなくて、原料も自社生産されているんですか。
平澤氏: そうです。ブドウは余市町、リンゴは仁木町で栽培しています。当地で自然栽培をされていた方から、不採算と人手不足等で経営を続けることが難しくなり、「運営してもらえないか」と相談を受けたのがきっかけでした。
編集部: なるほど。それにしても、自然栽培は簡単ではないでしょうし、平澤さんにはそうした農業の知識がおありだったのですか。
平澤氏: いえ、たまたまその自然栽培をされていた方との面識はあったものの、自分に栽培技術があったわけではありません。
編集部: そうでしたか。ところで、このワイナリー建物の正面上部には「北海道自然栽培農学校」と書かれていますが。
平澤氏: はい、そうなんです。自然栽培の畑の運営を引き継ぐにあたり、様々な方のお力添えをいただきました。「自然栽培」の提唱者は木村秋則先生です。
Hokkaido木村秋則自然栽培農学校は、2010年に開校しました。農薬を使用しない農家が、近隣の農家から虫の被害→病気(黒星病)に感染したのは、農薬を使用しない農家に責任があると訴えられた時(1989年3月)に、村松弘康弁護士が弁護を担当し、木村先生が証人として協力したことから始まります。
ですから同農学校の事務局は村松法律事務所内にあり、圃場は仁木町・余市町・江別市西野幌などにあります。
弊建物上部の表示は、農学校で栽培された果実を使用して醸造しているワインやシードルがあるからです。
■障がい者の方に活躍の場を
編集部: なるほど。自然栽培や農学校との繋がりの経緯はだいたいわかりました。しかし、栽培技術面がある程度クリアできたとしても、もともと不採算で人手不足だった畑を引き継ぐには、まだ課題がありそうですが。
平澤氏: そうですね。そこで「人手」の部分は、障がい者の方にご活躍いただけないかと考えました。
編集部: 平澤さんは、その方面にも詳しかったのですか。
平澤氏: それほどでもなかったのですが、当時、たまたま国の政策として「農福連携(農業と福祉事業の連携)」といったことが推進されていたのです。そこで株式会社リベラを設立し、2020年5月に就労継続支援施設の指定を受けました。今では、就労支援→移行支援→障がい者雇用をワンストップで対応できる「多機能事業所」となっています。
編集部: 「リベラ」のネーミングの由来はどのようなものですか。
平澤氏: 「リベラ」とは、ラテン語で「自由」を意味します。自由に駆け回り、美しく、汗を流し働く姿を想像し、多機能型事業所の名前としました。ホームページには次のように掲載しております。「人間の尊厳、仕事のやりがい、生きがいにあふれた人生を、自らが実現する挑戦の場」と。
編集部: 障がい者の方が真に活躍できる場を目指しているのですね。そして、人手不足については手当できたわけですね。
平澤氏: 人数はある程度確保できても、健常者の方と同じ働き方を求めるわけにもいかないといった事情はあります。しかし、障がい者の方ならではの優れた能力もあるんです。障がいの種類にもよりますが、例えば、決まった作業を黙々と繰り返してやってもらえる方もおり、心強くもあります。
編集部: そうなんですね!今では何名の方が働いておられますか。
平澤氏: この9月現在、社員(健常者)は11名ですが、障がい者の方は、知的障がい=10名、精神障がい=10名、身体障がい=0名、その他障がい=7名で、計27名の方が働いてくれています。
■都市型ワイナリーの実現
編集部: さて、いよいよこのワイナリーについてお聞かせください。札幌市の中心部にワイン醸造所をつくるとは驚きですが、どんな想いがあったのでしょうか。
平澤氏: 自然栽培の畑を引き継ぎ、曲がりなりにも農作業が賄える体制はできました。しかし、このままでは、働いてくれている方達への賃金支払いには限界があると考えました。春から秋まで、自然栽培とその収穫に携われる間はいいのですが、冬場はどうしても仕事が少なくなります。
編集部: 障がい者の方も含め、賃金も上げて行かねばなりません。
平澤氏: そうなんです。とくに障がい者の方が冬場でも通いやすく、一年を通じて働くことができ、お客様にとっても立ち寄り易い場所ということで、ここ(北2条西10丁目)に醸造所 兼 試飲所をつくることにしました。
編集部: それが、このLIBERA WINE TERACE(リベラ ワイン テラス)ということですか。ワイナリーと聞くと、ブドウ畑の近くでの醸造をイメージされますが、ここは消費者も立ち寄りやすく、まさに都市型ワイナリーですね。それにしても、よくこの場所に実現されましたね!
平澤氏: ほんとうに、もうこれは、「リベラの夢」とも言えるもので、ほんとうにたくさんの方々の知恵とご支援をいただき、幸いにも、「事業再構築補助金」の採択も受けられてのことでした!!
編集部: 障がい者の方がここで働くうえでの工夫も、色々とされているようですね。
平澤氏: はい。すべての障がい者が、この醸造所に関わり仕事ができるよう、醸造区域は安全面に配慮した構造に設計したうえ、使用する機械の選定においても配慮しました。醸造経験が浅い方でも就労する機会が得られるよう、醸造システムにAI(人工知能)技術を活用しています。これにより、自然栽培の果実でつくるワインの良さを最大限に引き出す醸造方法となっております。
編集部: タンクがいくつも見えますが、製造量はどのくらいですか。
平澤氏: ステンレスタンクは11基で、年間醸造予定量は16,000本です。ブドウの品種はナイアガラ、ケルナー、ピノノアールなど8種類程度を検討しています。リンゴでつくるシードルもあります。
編集部: ワインやシードルのボトルには「MILO」と書かれていますね(写真❶➋)。
平澤氏: 「MILO」は、私どものワインのブランド名です。ミロのヴィーナスに由来し、「究極の美」という意味で、農法、醸造方法において究極を追求しているところから名付けました。
エチケット(ラベル)のデザイン「MILO」は、北海道出身の世界的現代彫刻家:安田侃氏に作って頂きました。
編集部: なるほど。それで安田侃氏の彫刻が描かれているんですね。ところでこの1階は「試飲所」とのことですが。
平澤氏: はい。ワインを試飲しながらブルスケッタをお楽しみいただける専門店ということで、「Bruschetteria MILO(ブルスケッテリア ミロ(写真❹))」と名付けています。
編集部: 「ブルスケッタ」とは何ですか。
平澤氏: ブルスケッタは、イタリア中部の郷土料理で「おつまみ」や「前菜」として用いられています。ここでは、ミシュランガイド一つ星「みえ田」(札幌市中央区)のオーナー:三枝展正氏にコンセプトを考えて頂き、イタリアン「TRATTORIA DA OKUMURA」のオーナー:奥村雄史氏に料理指導をして頂いたブルスケッタを提供しています。
編集部: すごいですね! ほんとうに多くの著名な方々のご支援を頂いているようですが、ほかにもいらっしゃるのでしょうか。
平澤氏: そうですね。ほかには、サードプレイスとしてのテラスの企画に関し、村松法律事務所の高齢者・障がい者の総合支援サービス「ゆとりろ」と提携しており、弁護士の村松弘康氏にもお世話になっております。まだほかにもいらっしゃるのですが、これまでにお名前の挙がった人は、常に関わって下さっている方々になります。
編集部: そうですか。平澤さんの並々ならぬご努力と、ほんとうに多くの皆様のご支援のもと、「リベラさんの夢」が現実化したことがよくわかりました。最後に、今後に向けて目指していることなど、差し支えない範囲でお聞かせください。
平澤氏: はい。リベラワインテラスが実現していく「3つの社会的意義」を次のように考えています。
➀障がい者の就労と社会参加の機会を増やすことで、働く楽しさと誇りを持っていただく
②木村式自然栽培によって農業にルネッサンスを起こす
③デザインの力で夢を実現する
このうち③については、様々なプロフェッショナルとの共創といったことですが、とくに重要なのは、➀であり、弊社の存在意義はそこにあると考えております。
編集部: 本日はお忙しい中、貴重なお話を聴かせていただきました。ありがとうございました!
<インタビュー後記>
お話の途中、平澤さんは、「障がい者の方にお支払いしている金額が最低賃金に達していないことが、周囲の人達から理解されにくく心苦しい」とおっしゃっていました。そして、「今は750円だが、一刻も早く最低賃金以上をお支払いしたい」とも。
あとで調べて分かったのですが、令和4年度の北海道における障がい者の平均工賃(賃金)は、月額 30,312円。うち、就労継続支援A型事業所 月額81,220円(雇用型81,779円、非雇用型34,736円)。
うち、就労継続支援B型事業所 月額19,932円、時間額275円 でした。
(北海道庁ホームページ:福祉局障がい者保健福祉課、「工賃(賃金)実績について」より)
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